異・畏・翼 の話

異・畏・翼。
3つの字について、見ていきましょう!

★白川静の見解

お馴染み、白川の『常用字解』から。
※『常用字解』平凡社:白川静

ズバリ「異」を人間ではないモノ…そう『鬼』だと語ってます。
異=田+共と書きますが、田の部分を鬼の頭部だと考えているんですね。
人が死んで、「人鬼」となると。大きな頭部であることも、人間ではない存在だと語られてます。

我々が今イメージする鬼とはちょっと違いますね。
このような、神異のモノが、両手を挙げている様子を表した字であり、
ことなる、すぐれる、あやしむ…という意味に繋がったと語られます。
象形とはちょっと意外ですね!?

●画像●

この見解は他の字にも繋がっており「畏」も、やっぱり鬼だとしています。
鬼が杖を持っている様子…つまり、これも象形ですね。

★一方『漢語林』では

鎌田・米山の『漢語林』ではちょっと違う見解が載ってます。
※『漢語林』大修館書店:鎌田正、米山寅太郎

「異」という字は、仮面を被った人だとするんですね。
確かにそれもわからなくもないですね。

お面を被った人が、両手を挙げている様子…とこの辺りは同じような考え方です。

「畏」はどうかというと、こちらでは【鬼=人間ではないモノ】として解説されてます。
ただ、杖を持っているのではなく、「鞭」となっています。
人間ではない、あやしいやつが鞭を持っている…ことで、おそれるという意味になったと。

静止状態では、鞭なのか杖なのかよくわかりませんが…。

なお説文解字では、鬼+虎として書かれているようです。

★なぜ翼は羽+異なのか?

羽でも付けた鬼なのか。仮面男なのか。

白川はここで金文の例を挙げています。
(※金文というのは、昔の青銅器に掘られた字体のことです。)

「異」という字が「たすける」という意味で使われているらしく、「異」が「翼」の元の字であったと解説されてます。
そこに「異」+「羽」ということで、「翼」になったと。

ですから【扶翼】や【翼賛】といった、たすけるという意味を持つ熟語も紹介されています。
日常ではなかなか見ないですけど。

漢語林の方でも、両手を挙げてる人に羽が付くことで、翼ということになってます。
さらには、両手を挙げてたすける、ということにも繋がり…
そのため翼という字には、たすけるという字義があると解説されてます。

なお説文解字では、「翅なり」ということらしいです。
ストレートな解説ですね。

★「異」の成り立ちはどこへ行った?

となると、鬼&お面男の話はどこへ行った?というカンジですよね。
それこそ、羽の生えた鬼が~仮面が~という会意・象形ならまだしも、だいぶ話が飛躍してしまっています。

金文に用いられている「たすける」という意味がどういう流れで使われ出したかもわかりません。
両手を挙げてたすける~というのは、儀礼的な様子か何かだったんでしょうか?

正直、絶対的な正解がない以上、よくわからないと言ってしまえばそれまでですが…
「異」というのはタダの人間ではなさそうですよね。

単純に、人ではない、鬼なのか。
仮面を付ける必要があった人物なのか。
そしてさらに他の人の助けとなる存在…
というように考えられるんじゃあないでしょうか。

以上、異・畏・翼の話でした。