ツネザワシのひとりごと その三。「城を経て」

ツネザワシのひとりごと その三。「城を経て」

こんばんは。ツネザワシです。
私事ではありますが、先日愛知へ行く機会があり、その流れで名古屋城へ行って参りました。
今回のテーマはそれに感化されたのか。「城」です。
城

◆城という字は「土が成る」。まさか、そのまんま?

すっかりおなじみの藤堂先生は、成を「丁+戈」としています。

ズバリ、あの武器の戈(ほこ)ですね。
戈
※出典・引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%88

上向きの刃と、直角に刃が付いています。

ここでいう戈(音読みだと、カ)は、道具のことです。道具を使って、とんとん打ち固めて城壁をつくること。
では「丁」は何かという話ですが、「音符(おんぷ、音をあらわすパーツのこと)」であり、さらに「うってかためる」という意味を持つということだそうです。

これが「成」という訳です。
ですから、成立、できあがる、なる、という意味にもつながっています。
城、というのも土+成で、イメージしやすいですね。
土を盛って固めて、つくりあげるのが、城。

「盛」なんかも、同系です。
皿(容器)の中に、盛り固めていくということなのです。
ここでは「丁」は、たんたんとたたくことを表しています。
土をどんどん盛り固める、ということですね。

◆白川の解釈は?ただの「戈」ではない!

では白川はどのような解釈をしているのか。
成を「戈+丨(コン)」としています。戈はそのまま、ほこなのですが「丨(コン)」は飾りの垂れている姿、だというのです。

戈の制作が終わり、飾りを付けて、祓い清める…ことで、完成する・できあがる、という解釈です。
ですから城という字の解釈も若干変わってきます。祓い清めることがポイントになってきますから、城というのは、祓い清められた城壁なのです。
(なんだかクドい表現である…。)

なお、城には「きずく」という訓があります。

◆城の話はまだ続く。もとの字形までさかのぼる。

さらには、城という字にもとの字があり、「ジョウ」というようです。
ジョウ
左の部分は「カク」といいます。

それが、この下の文字。
カク
この「カク」ですが、城郭の平面系を表しています。
もっと古い字形では、南北の部分が「やぐら」を示していたようです。

では今回はこのあたりで。

*出典・引用
『漢字源』藤堂明保:学研
『常用字解』白川静:平凡社

再び漢字ミュージアムのボランティアへ!~現代の子供の漢字力~

◆漢字ミュージアムにて、ワークショップ開催!

公式サイトでも告知されておりますが、漢字ミュージアムにてワークショップが開催されています。

先日、私<ツネザワシ>がボランティアとして参加した際に行われていたのは「漢字カルタ」作りのワークショップです。

小学生を対象に、部首を読み札にし、取り札にその部首の好きな漢字を書く、というものでした。
完成後には、そのまま遊べます(笑)

やはり学年もまばらなので、1年生はなかなか苦戦しているようでした。
ただ、「この漢字の部首って何~?」「これは~?」と、ワイワイ楽しみながら着手しており、微笑ましいものでした。

◆現代の子供の漢字力はどれほどか?

そんな中、ある3年生の生徒は先述の「酒」の部首をバッチリ理解していたものだから、私も大変驚きました。どうやら保護者の方によると、幼稚園の頃から漢字が好きで、漢字検定もドンドン受けているとのことでした。
彼は自分のペースで、何を書こうかと迷いながらも、最後まで粘り強く制作していました。

漢字カルタ作りに限らず、漢字ワークやプリント学習など、一見すると、はやく且つ正しく終えた生徒が優秀、と見えてしまうかも知れません。しかし、実際は全くそんなことはありませんね。

また話は変わりますが、最近は「さんずい」が水にまつわる漢字の部首であることを知らない生徒も増えてきているようです。
実際、堀江中学校に訪問した際、国語の先生から、そうお聞きしました。
なかなか生徒の漢字力低下というのは悩みの種のようでした。

しかし堀江中学校の(放課後漢字学習に参加した)生徒たちは、大変、漢字に関する興味関心に溢れていたと感じます。
学ぶための基礎となる、「気持ち」の部分は十分整っているのです。
あとは、いかにベースとなる部分を保ちつつ、よい方向へアレンジしていくか。

◆だからこそ必要な漢字力

放課後漢字学習はあくまでも一例ではありますが、今後も子供たちがに向けて楽しみながら漢字を学べる講座を開催したいと考えております。
勿論、子供だけではありません。
漢字に限らず国語力は「学生」たちにも、そして「社会人」になってからも絶対に必要なスキルです。

今後は、広い世代に向けて漢字を理解する、学ぶ、そして楽しむための企画を現在検討中です。
こちらのHP・ブログ・ツイッターなど、また告知予定です。

では最後になりますが、講座開催、文章執筆など、ご依頼・お問い合わせなど、気軽にご連絡ください。
t.tsunezawa1990@gmail.com

ツネザワシ

ツネザワシのひとりごと その二。「酒の部首」

ツネザワシのひとりごと その二。「酒の部首」

ひとりごとシリーズ二回目。
今回は「酒」という漢字についてです。

ひとりごと_02

◆「酒」という漢字の部首は「さんずい」ではない!

「酒」の部首…もしかして「さんずい」だと思っていませんか?
実はそうではなく、「酉(ひよみのとり)」といいます。
他にも、『とり』『さけのとり』など、様々な呼び方があります。

◆身近な漢字に含まれる「酉」
ひよみのとりは、「酒」以外にも「酢」「配」「酔」といった、身近な漢字にも含まれています。

「酉」は、音読みでは「ユウ」と読み、では何を意味する漢字かというと、ズバリ【酒つぼ】です。
酒つぼの象形なのです。確かに「酉」はつぼの形に見えますね。

そのため、お酒にまつわる漢字に多く使われています。
酩酊、酣(たけなわ)など、大人の方が目にする機会も多いことかと。

「酒」という漢字は、一見「さんずい」が部首に思えてしまいますが、あくまでも水…ではなく、酒がメインの構成要素なので、「ひよみのとり」が部首になっているのですね。

ツネザワシのひとりごと その一。「強と弱」

ツネザワシのひとりごと その一。「強と弱」

こんばんは。
ツネザワシです。
今回、新しくシリーズ化してみました。

強弱

「ツネザワシのひとりごと」
どうでしょうか。
今までと打って変わって、何の漢字を紹介するかわかりやすくなりましたよね?
しかもまあ、わざとらしいぐらい、赤で強調されてる部分があるぐらいです。
さっそく見ていきましょう。

「強」は虫!?

さて藤堂先生の説から。
辞書や学者の違いなどは、こちらの記事ををどうぞ。

藤堂先生、ズバリ「虫」だと述べています。
『がっちりしたからをからをかぶった甲虫』
※漢字源:学研 より引用。なおこれ、原文ママです。ものすごく、ストレートな表現です。

その前に紹介しなければならないのは「彊(キョウ)」。
『彊とは、がっちりとかたくじょうぶな弓』だと説明されています。

テグスと関係があった!?

さて、白川ですが、同じように、やっぱり虫だと言っています。
※『常用字解』:平凡社
その虫とはなんと「蚕」。
蚕は、歴史的にもすごく長い間、人間によって育てられています。
人間によって都合よく出来上がった虫なのですね。
生存するための機能も低下…というよりほぼなく、人間の手が加えられないと生きられないのです。
なかなか残酷な話ですが。

ところで。皆さん「テグス」ってご存知ですか?
太公望の皆さんは、よく聞かれることかと思います。
…太公望とは、釣りが好きな人、という意味もあります。

テグスとは釣りで使われる透明の糸です。
ボクも浅学だったのですが、テグスというのは、どうやら蚕と関係のある言葉のようです。
ズバリ、「テグスサン」。
テグスは、テグスサンという蚕から取れる糸だったのです。
正直、英語などの外来語だと思っていました…。日本語だったんですね!

さて、このテグスですが、なかなかエグい作り方をしています。
まずテグスサンの幼虫の体内から、絹糸腺というものを取り出します。
そして酢酸につけて引き伸ばす。
乾かして糸にする。はい透明の糸、テグスの出来上がり!!
…という訳なんです。なかなかエグいでしょ?
※出典『大辞林』:三省堂

さてじゃあここで「強」とどのような関係性があるかというと。
このテグス、つよいんです。強力な糸なのです。
これを、弓に張ると。そうすると、通常の物より、つよい弓になるようなんです。

では「弱」はどういうものかというと?

「弱」という字はどういう成り立ちかというと、お二方とも同じようなことを述べてます。
飾りのついた弓。
戦いのためではなく、儀礼用の弓なので、強くない弓、すなわち弱いということに転じるのです。
赤いチョンチョンの部分が、飾りを示しているんですね。

以上、ひとりごとでした。

「名前の漢字」の意味を探る

「名前の漢字」の意味を探る

penguin
★自分の名前の漢字…身近過ぎると意識しないもの?
突然ですが、皆さんは「自分の名前に使われている漢字」を意識したことはありますか?
小学生のとき、学校の宿題で名前由来を家族に訊いてきなさい…というものがありましたが、厳密に漢字の「意味」まで知っている方は少ないのではないでしょうか。

どうしてこんな話をしているかというと、今、私(=ツネザワシ)は世の中の人々の、「名前の漢字」に興味を持っています。いや、持ち出しました。
さらに言うと、世の中の人々に、漢字に興味を持ってもらうために身近な話題である、「名前の漢字」を題材に選択した、ということなのです。ちょっと、実のところを申し過ぎましたね(笑)

単純に、漢字の話をするのでは、なかなか興味というのは湧きにくいと思います。
それこそ、テレビの漢字クイズならまだしも、漢字を楽しく理解してもらうことは非常に難しいと感じます。
だって、みんな漢字の話題なんて普通しないでしょ?
…という本音もあります(笑)

ところが「名前」となると、意外と皆さん関心を持っているのです。
あなたの名前の漢字、それは〇〇という意味があるんですよ~というお話をすると、たいがいは、皆さん驚かれたり、いたく納得されていたり、とてもよい反応をしていただけます。
やはりそれだけ名前というのは重要なファクターなのですね。

★「ペンギン」という漢字!?
…ところで何故ペンギンなのか?
実は先日、漢字縁日のボランティアの際に、ペンギンの話があったのです。
たまたま、企画の一つである、漢字釣り(※魚釣りの要領で、漢字のしおりを釣っていただけるゲームです)をしていたお子様が、「ペンギンはいないの~?」と問いかけたのです。
※祇園四条にオープンした、漢字ミュージアムにて、夏季の間にお楽しみいただけます。
是非とも、お越しください!

単にそれは、ペンギンのしおりがないか、という趣旨の発言なのですが…
賢明な読者の皆様の察する通り、漢字釣りには、鯛・鰻・海月といった、漢字で表せる生き物しか、いなかったのです。

ただここで小話をすると、ペンギンを敢えて漢字で書くならば、「企鵝(キガ)」と書くことはできます。
さらに言うと、沖縄には「辺銀(ペンギン)」という名字の方がいます。
「えっ!?」と思わず声が出てしまいそうになりますが、どうやら中国の方が帰化された際の、名字のようです。最近はこちらの食堂が人気を博しているようで…
某オシャレ雑誌にも取り上げられていましたね。

★「名前」があるということ
名字にせよ、名前にせよ、名をつけるという行為には大変意味があります。
勿論、名を呼ぶということも、非常に奥深いことです。
言霊や、諱(=忌み名)といった概念があるぐらいですから、我々が名前に関心を持つというのも、何か古来よりの潜在的な意識が、あるのかもしれません。

名前の由来やルーツなど学習したい方には『日本人なら知っておきたい 名前の由来、名付けのいわれ』実業之日本社:大野敏明 がオススメです。

このあたりの話題は、また今度。
ペンギンの話もしたいですが、長くなるので、やっぱりまた別の機会で。
以上、名前の話でした。

漢字ミュージアム、オープン!ボランティアに行ってきました

漢字ミュージアム、オープン!ボランティアに行ってきました

こんにちは。ツネザワシです。
気づけばもう7月も半ば。
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先日、京都は祇園四条にオープンした、漢字ミュージアムに行ってきました。
漢字教育サポーターとして、漢字縁日のボランティアをば。

この漢字ミュージアムですが、日本漢字能力検定協会がオープンに携わっており、館内は漢字に関する様々な資料が目白押し。
なんと本物の甲骨文字までありました。
現在、企画展として漢字縁日が行われているのです。

縁日というだけあって、懐かしいゲームが集まっています。
勿論、参加は無料です。
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↑こちらは射的。ボールを投げて、四字熟語を完成させます。

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↑写真ではわかりにくいのですが、「□=くにがまえ」を投げる輪投げです。
狙いは、玉・寸・大…といったもの。
くにがまえと合わさると、見事、国・団・因、といった漢字になりますね!

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↑お次は魚釣り…ではなく漢字釣り。オリジナルのしおりを釣りあげれば、持ち帰ることができます。(※一人2枚まで)
気に入らない魚はキャッチ&リリース可能!

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とはいっても、魚以外も、なんだかいっぱいいます…。種類は今後増える予定らしいです。

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↑縁日の目玉?は、缶バッジのコーナーでしょう。
オリジナルの缶バッジをデザインして楽しめます!お一人様、お一つプレゼント。
漢字を書いてもよし、イラストを描いてもよし。
すでに用意されているデザインに、日付を記念として書かれる方もチラホラ。
お孫さんの名前を入れる方々もいらっしゃいました。

私が参加した日は、平日だったため、来館者はお年寄りの方が多かったのですが、漢字縁日も大いにお楽しみいただけました。
童心に帰るとはよく言ったもので。

勿論、常設展も大いに見応えあり、また老若男女問わず、楽しく学べるのではないでしょうか。
祇園まで行く際には、是非とも漢字ミュージアムもお立ち寄りください。

堀江中学校の放課後漢字学習を開催しました!

堀江中学校の放課後漢字学習を開催しました!

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 堀江中学校の放課後漢字学習に参加してきました。参加というものの、僭越ながら講師を担当させていただきました。

 堀江中学校は大阪市内にある、公立中学校です。
※なおHP内にて、すでに今回の講座が紹介されています。
 地域交流や部活動、そして学習にも大きく取り組んでいる学校であり、今回は「漢検対策」を大きなテーマとし、漢字にも興味を持ってもらうためにも、放課後の時間に講座を開催する運びとなりました。

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 第1回目は5/30(月)、そして2回目が先日の6/14(火)に開催され、全2回の講座が無事終了いたしました。私自身もホッとしております。
 講座内容はブログにも掲載していますが、甲骨文字と漢字の成り立ちなど、漢字を学習する上で必要だと思える歴史的な背景の部分を、まずは取り上げています。他にも漢字の造字法についてや、漢検対策ひいては漢字を学習することに関する授業を展開しています。

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 中学生たちは、1年~3年生までバラバラです。さらには、30人以上もの生徒が参加してくれています。これほど生徒たちが漢字学習に真摯な態度を向けていることも驚きでしたが、とても真剣に授業を受けてくれていたことも、あわせて、よい意味で驚くばかりです。

 アンケート上ではありますが、感想を訊くと「少し難しい」という声が目立ったものの、楽しかった、漢字に興味が出てきたと、大変嬉しいコメントもちらほら。冥利に尽きます。

 講座に関しては「中学生への漢字教育」という点からも、今後詳細を報告したいと考えています。そして彼らは、7月に漢検受験を控えているということもあり、事前学習と結果の相関関係も探っていくことができればと思います。

 まずは所感をば。やはり、漢字学習に関しては「努力する」ことが、どうしても重要なポイントになってしまいます。しかし、努力すること、そして覚えること、ということには個人差もあります。どうすれば、楽しく・面白く、頑張ることができるのか、こういった点を考察し、さらには今後の授業にも取り入れていければ、新たに見えてくるものがあるのではないでしょうか。

 私自身、課題も残る講座ではありましたが、この場を借りて、改めまして堀江中学校の先生方、生徒諸君の皆様にお礼申し上げます。
 今後も、経澤…もとい、ツネザワシをよろしくお願いいたします。

漢字の歴史(2)甲骨文字とその後

漢字の歴史(2)甲骨文字とその後

こんにちは。ツネザワシです。
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今回は、前回の続きです。「甲骨文字とその後」を、シンプルにご紹介します。

甲骨文字の出現~前回の復習も兼ねて~

 殷の時代に甲骨文字が出現しました。紀元前1300年頃のことです。殷の後期にあたり、この時代以前に文字が使われていた可能性も十分にあります。ただし、発掘された資料というのが、この甲骨であり、甲骨文字がが現存する最古の文字資料にあたるのです。
 亀の甲羅や牛・馬の肩甲骨に文字を刻み、 炙ることで発生するヒビ割れをもとに占いを行いました。 甲骨文字の中には、象形文字という実際の物の形や様子をモチーフに してつくられた文字もあります。

金文の出現

 金文とは、青銅器に鋳込まれた文字です。青銅は、言葉は日本史や世界史などでよく聞きますよね。古くは銅のことを金と呼んだため、金文という訳なのです。

 余談ですが…
青銅とは、銅と錫(スズ)の合金です。銅は、金属の中でも珍しい、色のある金属でです。祭器や武器として、幅広く用いられました。錆びてしまっているため、どうしても「緑青」のイメージが強いですが、本来は黄銅…すなわち黄色だったそうです。
銅は加工性に優れ、また耐久性もあります。現在でも高級調理器具メーカーが銅の鍋などを売り出していますね。また、古代エジプトやヨーロッパでも、銅は用いられておりました。

 閑話休題。青銅器というのは、当時王が褒美として諸侯や重臣に与えるものでした。また戦いの勝利を記念し、後世への記録を残すためにも、金文は鋳込まれました。その字体は、甲骨文字よりも肉太に、そして装飾的です。ですから、金文の方がより「絵」に見えることもあるでしょう。

篆文については、また今度!

「申」の成り立ちを例に
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 画像は「申」の字の、甲骨文字、金文、篆文を並べたものです。申は、雷の象形であり、稲妻を表しています。雷は、神が発するものと考えられており、そこから「もうす」という意味に繋がったのですね。確かに、甲骨文字の申はグニャグニャと屈折しているものの、稲妻の形に見えなくもないですね。もちろん、甲骨文字の書き手もいろいろな人がいたのでしょうから、もっとカクカくとした字形で表現する人もいたことでしょう。

 「神」の字に「申」が使われているのも納得ですね。なお「しめすへん」は、その名の通り、「示」のことであり、神への儀式などを行う台を表しています。

ちなみに、雷がいわゆる「ジグザグ」している理由は科学的に解明されています。これは話すと長くなりますが、せっかくなので…雷は進みやすいルートを進んでは止まり、進んでは止まり…繰り返しながら進んでいきます。大変短い時間でそれを繰り返すので、ジグザグの形になるのです。雷の話も、また機会があれば。
 
この屈折した稲妻がもとになり、申という字には「のびる」という意味もできたのです。ですから「伸」や「紳」にも同じパーツや音があるのです。

 こういったように、意味を表す部分と、音を表す部分を持っている漢字を「形声文字」と言いますが、これはまた今度、詳しく…

 そうして、私たちが現在使っている漢字は、この甲骨文字や金文、篆文を経て、さらなる字形の変遷があり、ようやく「楷書」に落ち着くことになるのです。

参考文献・引用
『殷 中国史最後の王朝』落合淳思:中公新書
『常用字解』白川静:平凡社
『漢字源』藤堂明保:学研

漢字の歴史(1)甲骨文字、そして象形文字

漢字の歴史(1)甲骨文字、そして象形文字

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こんにちは。ツネザワシです。

先日大阪の中学校にて、漢字講座を行いました。
放課後学習に力を入れている中学校であり、「漢字検定対策」と「漢字に興味を持ってもらう」ことをテーマに授業を開催。

漢字に興味を持ってもらう、そのテーマに選んだのは、ズバリ、甲骨文字と象形文字についてです。今回は授業で行った内容を含め、甲骨文字と象形文字についてシンプルではありますが、補足を入れつつご紹介したいと思います。

※中学校の放課後学習に関しては、また後日詳細をお伝えします。

漢字の出現

今から3000年以上の前の中国の話です。
紀元前1300年、この頃の中国は 「殷」という名前でした。殷の時代では「甲骨文字」という文字が使われていたのです。

甲骨文字の世界を少しだけ覗いてみましょう。 殷の時代では、亀の甲羅や牛馬の肩胛骨を炙り、発生した「ひび割れ」をもとに占いを行いました。

具体的には、甲骨に占いのテーマを刻んでおきます。穴を穿ち、熱した棒を当て、甲骨を炙ることで、ひび割れが発生します。このひび割れは「卜兆(ボクチョウ)」と言われます。この占いのテーマ、すなわち「卜辞」と、卜兆の結果を照らし合わせるのです。
この結果が、王の行動指針となり、さらには王の政治的権威や神性をも高めます。
また占いは儀式的なものへと変わり、実際には甲骨に細工を施すことで、王にとって都合のよい卜兆を出すことも出来たようです。

ところで、皆さんは「卜」という字を知っていますか?
水卜麻美アナウンサー、彼女の名前の「卜」は「カタカナのト」ではありません。うらなう、という漢字なのです。「占」という漢字をよく見てみると、確かに「卜」が見つかりますね。
この「卜」や、他にも「兆」という漢字は、このひび割れをもとにしてつくられた文字です。

なお、「兆」には二つに分かれるという意味もあるため、
「挑」…二つの仲を裂く、
「桃」…二つに分かれた果実、
と繋がるのです。

※『漢字源』藤堂明保:学研

甲骨文字は5,000字程度発見されていますが、すべての文字が解読されている訳ではありません。2,000字程度解読されています。また、まだ発見されていない文字もあることでしょう。
甲羅や肩胛骨に刻まれていた字、だから「甲骨文字」なのですね。
亀の甲羅といっても、お腹側、「腹甲」に刻みます。また牛馬の肩胛骨は、単純に大きいため、刻みやすかったのでしょう。

なお当時中国では、農民たちが甲骨を「竜骨」と称し、甲骨を薬として売りさばいていました。文字が刻まれていると、竜骨として成り立たないため、削り取られ、不要な甲骨にいたっては捨てられてしまいました。この際に失われた文字も、もちろんあることでしょう。

象形文字とは?

甲骨文字の中には、絵のような文字があります。現代の私たちが使っている文字とは大きく異なりますが、漢字の中には「象形文字」という、実際の物の形や様子をモチーフにしてつくられた文字もあるのです。

kokotsu_ex01
※公益財団法人 日本漢字能力検定協会
漢字教育サポーター 素材集・付録集より引用

こちらに紹介している甲骨文字はあくまでも一例に過ぎません。
また資料よりスキャンし、アウトライン化し取り込んだものなので、若干のゆがみがあります。
甲骨文字は、当時、殷の占い師など文字を扱う職業の者たちがまとめあげたものだと言われています。この占いを行う者たちは、「貞人(テイジン)」と言われています。

古代中国の伝説では、「蒼頡(ソウケツ)」が鳥の足跡をヒントに漢字を生み出したと言われていますが、あくまでこれは伝説でしょう。
文字の起こりに関しては、自然発生的な部分もあるとは思いますが、もちろん人為的な部分も大きいと考えられます。ですから、甲骨文字が100%最古の漢字、とは言い切れないのです。今後新たに甲骨文字よりも古い、考古学的な資料が見つかれば、ひっくり返るワケです。

今回はここまで!

参考文献
『漢字-その生い立ちと背景-』白川静:岩波新書
『殷 中国史最後の王朝』落合淳思:中公新書
『白川静 漢字の世界観』松岡正剛:平凡社新書

【すぐに使える】「々」を入力するときの時短テクニック

々_

今回は、ちょっと便乗して「々」について。
日本漢字能力検定のサイトにて、こんな記事がありました。

www.kanken.or.jp

こちらでは「々」は踊り字だと紹介されています。
はい、そうです。「々」は漢字ではありません。
詳しいことは、上記のサイトを見ていただいて…。

私がお伝えしたいのは、ちょっと違う視点から。
では、この「々」ですが…
パソコンで入力するときにどのように入力していますか?
もしや「云々」と入力して、「云」を消している…そんなことはないでしょうか?

    ズバリ、オススメはパソコンの辞書登録機能で『ノマ』と登録してしまうことです。

実際に「々」は、『ノマ点』と呼ばれることもあります。

この辞書登録テクニックですが、Windowsでは右下の【あ】のところから、【単語の登録】を開くことで行うことができます。
わからない方は、IMEオプションで調べていただくとよいかも。

「々」に限らず、キーボード入力を行うことが多い皆さんは、様々な短縮ワードを登録をしておくと便利ですよ。

例えば、「()」を「k」一文字で。
「よろしくお願いいたします」を「よろ」で。
「/」このようなスラッシュは…「すら」。
「:」時間を書くときによく使うコレは、「じ」で。

案外、こういったものは盲点ではないでしょうか?

関西だけ!?「闇で」という表現を使いますか?

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「闇で」

アナタはこんな言葉の表現使いますか?
どういう意味、使い方をされているのでしょうか。

★実際の用例は?

会社の方と話していた際に耳にしたこの表現。
例を挙げると、『闇で遊んでるんでしょ?』
…というようなもの。

実は~、裏では~、というニュアンスを含むようです。
正直なところ、初めて聞いた際には思わず意味を尋ねてしまいました(笑)

★【心の闇】とはまた違うもの

最近では闇というと、【心の闇】に焦点が当てられているような気がします。
芸能情報、ネットの記事など、どちらかというとその人物の抱えるマイナス面、ネガティブな要素…をイメージしやすいですね。

上述の「闇で」という表現も、確かにどちらかというとネガティブなものに入るのかも知れません。
裏では悪いことやってるんでしょ?、実は●●なんでしょ?というように、悪いこと・後ろめたいことを、おもしろおかしく捉える表現に感じられます。

★いつから使われているのか?また地域は?

ところで、私は福井出身なのですが…この「闇で」という表現を地元で聞いたことはありませんでした。
また、大学時代を京都で過ごしたのですが、やはりその際も周囲で「闇で~」と使っていた人を見たことがありません。

関西で近年使われ出した表現なのかと思いきや、検索してみたところこんな記事が。
「やみで」
※1999年9月14日『よいこの今ドキ語』毎日新聞東京本社版朝刊17面:羽渕一代 

なんと、1999年には既に使われている表現でした!

2000年突入前とは…非常に歴史を感じます。
こちらの記事を見ると、確かに関西の若者言葉のようですね。

思えば、この表現を使っていかた会社の方は、僕よりも年上の方でした。
ある程度、年代も関係あるかも知れません。

★さらにSNSでも

他にも、mixiでもこんなものが。
ぇ、じゃぁ『闇で』って使いますか?

ここでは、2005年に僕と同様の疑問を感じている方がいらっしゃいますね。
回答を見ていると、中学生の頃使っていた、関西だけど知らない、関東でも使っていた、若い頃はよく使ったけど今は言わない、など様々な回答があります。
少なくとも、1995年頃の大阪では確実に使われているようです。

★90年代は何があった?

主に関西で使われていたようである、「闇で」という表現。
1990年代半ば、というのはポイントかもしれませんね。
この頃、何が流行っていた、起きたか調べてみました。

年代流行
※『年代流行』より

プレイステーション、 阪神淡路大震災、たまごっち…など、印象的なフレーズが並びます。
そんな中、「コギャル」というのはまさに若者の象徴ではないでしょうか。
小学生のとき、国語の教科書に「オニムカツク」といった若者言葉を扱った題材がありましたが、これはまさに時勢を反映したものでしょう。
流行を鑑みても、アムラー、スケーター、腰パン…というようなものが並んでいます。
若い人ならではかも知れませんね!

バブルがはじけた90年代。勢いのある若者たちの、ネガティブなことを乗り越えようとする気概を感じます。
ただ、僕は当時小学生だったので、90年代の雰囲気を肌でしっかりと覚えていないのが悔やまれます。

★若者絶頂の90年代を経て「闇で」は今もなお残る

結局のところ「闇で」は、どちらかというと、今の20代よりも当時90年代を色濃く経験した層が使っている表現なのかも知れません。
ただ、明らかに調査対象・サンプルが少なすぎるので…今後の言語調査などに期待ですね。
大学の社会学部で取り上げてもいいケースだと思います!

漢和辞典アレコレ 〜辞典によって何が違うのか〜

書店には漢和辞典がたくさん並んでいますが、一体何が違うと言うのでしょう。
知ってるようで意外と知らない、辞典の違いを紹介します。

*研究者が変われば、字の成り立ちも変わる

まず、多くの漢和辞典は『説文解字』という、中国の古い辞典をベースに作られています。
後漢の時代、許慎(キョシン)によって著され、数多の漢字が解説されています。

ただ説文解字が編集された頃は、まだ古い字形である甲骨文字が発見されていませんでした。
つまり、甲骨文字を基にした解釈が説文解字には載っていないのです。
また、研究者によって漢字の解釈も異なります。
そのため、世に出ている漢和辞典は、編者によって内容が異なっているのです。
勿論、共通の認識もありますし、『説文解字』がすべてではないことも確かです。

藤堂明保
学校の図書室に置かれていた『学研漢和大辞典』を覚えている方もいることでしょう。『広辞苑』のように、分厚い辞典なのです。
藤堂の基本的な考えは、「漢字の音と特定の意味の結びつき」というものです。そう、漢字の音を重視したのです。
文字は言葉を視覚的に訴えて表す道具に過ぎない、というのは、社会言語学の捉え方に近いかも知れませんね。
ここでポイントになるのが、藤堂の「単語家族」というアイデアです。
字の音と音同士が近ければ、共通の意味を持つ、というものです。なかなか日本語ではイメージが湧きにくいかも知れませんね。

例えば、「青」と、「晴」「清」「精」を見てみましょう。どれも「セイ」という音を持っています。(※あくまでもこれは、日本での音なので、中国本来の音は違うのです)
この「セイ」と言う音を持つこれらの字には、澄み切ったものという共通の意味があると捉えられます。この「セイ」という音と、ある特定の意味が結びつくのです。

加藤常賢
説文解字を基に編纂。ただ「民俗宗教」も解釈に導入しています。
例えば、古代中国の社会における「シャーマニズム」を例に挙げましょう。
シャーマンは、超自然的な力を扱い、また人智を超えた存在と交信できる存在でもありました。
古代の社会において、こういった能力を持ったシャーマンは「指導者」でもあったのです。
概して、シャーマンは背中の曲がった、柔弱な人でした。これは老人の特徴でもありますね。
…このような「シャーマニズム」解釈が随所に導入されているのです。

諸橋轍次
世界最大の辞典、『大漢和辞典』を編纂。大修館書店から他にも『広漢和辞典』『漢語林』等が出ています。鎌田正、米山寅太郎は、この諸橋轍次の流れを汲む訳です。
大漢和はやはり流石というべきもので、親字数は5万字、そして前15巻に及び、お値段も25万円という代物。その情報量の多さには目をみはるものがありますね。
古い辞書や文献から、データが掻き集められており、世界最大というのも頷けます。

白川静
近年人気の研究者であり、独特な文字解釈が取り入れらています。
『字統』『字通』『字訓』の三部作が有名ですが、より一般的なものでは『常用字解』が身近なものでしょう。

白川の考えの一つである「サイ」は「神への祝詞を入れる器」を示し、これが最大のポイントでもあります。
この「サイ」によって、新しい切り口の解釈が行われました。
それは今まで「口(くち)」だと考えられていたものを「サイ」として再検討したのです。
また古代の儀礼・呪術的事象を、数多くの資料から調べ上げ、字の成り立ちを説明しています。
ただ、白川の解釈に懐疑的な意見も多いのも確かです。
学会でも、藤堂派、加藤派、白川派…というように様々な派閥が存在しているぐらいなのですから。

私自身、この『白川文字学』は興味深いものと感じますし、児童の漢字学習の助けになるとも思います。やはり白川の考え方は、確かに「入り易いテーマ」だと思います。
※小ネタとしては、福井県の教育委員会が白川文字学を大きく取り上げています。
これは白川が福井出身ということもあるでしょう…。
地方紙である、福井新聞でも白川文字学が紹介されています。

*まだまだある、漢和辞典
紹介した研究者が全てではありません。勿論、日本ではなく、中国の研究者もいます。
そして、上記の辞典以外にも世の中にはまだまだ数多くの辞典があるのです。
旺文社、岩波、小学館…各社、ありとあらゆる辞典が書店を賑わせているのですね。
さらには、古い時代の辞典もあるのです。

例えば『康熙字典(コウキジテン)』。聞いたことがある方もいるかも知れませんね。
清の時代、「康熙帝」の命令によってまとめ上げられたものです。
上述の、説文解字よりも後にできたものにあたります。

*文字解釈は一つではない
漢字学習において、覚えておきたいこと、それは文字の解釈は一つではないということです。
近年ではテレビやインターネットで漢字の成り立ちをよく見聞きすることかと思いますが、実際のところ、その成り立ちの解釈が「誰」の解釈なのかは、同時に説明されないケースが多いように感じられます。

前述の通り、漢和辞典一つをとっても、多岐に及びます。
勿論、編者も説文解字を基にとはいえ、各々の解釈が及んでいるのです。
私たち漢字学習者は、広い視野を以て、取り組む必要があります。
ただ、その学習の中で、好きな研究者は出てくることでしょう。
また、使いやすい・読みやすい辞典というのも見つかることでしょう。

結局のところ、漢字は古いものですし、その「情報源」も同様に古いものなので、どうしても正解がわからない部分が大きいのです。
正解がわからないために、私たちが思い巡らすことも可能になっているのですね。
さて、まずは、楽しむところから始めましょう。

ツネザワシ

「挨拶」を掘り下げる

「挨拶って基本なんです。」

職場で資料を見ていたら・・・
『「挨拶」とは本来相手の心に云々』と書いてあり、アレ?と思う。
確か、相手を「うつ」ことじゃなかったか、と記憶してたので、調べる次第。

そしてまあ『新漢語林』をササーッと引いてみると、

「挨」①うつ ②おす ③せまる
「拶」①せまる ②ゆびかせ(指を責める刑具)をする ③せめる
とある。

では心云々は!? ソースは!? と思うのですが、
禅宗の僧の問答が云々という記述も、確かに後から出てきます。

これだけでは、どうも腑に落ちないので、白川先生の、『常用字解』も引きました。
「挨」に関しては『説文解字』がベースで、背をうつ、おす、ということのようです。

「拶」に関しては、別の解説も載っています。
人の首を切って~頭髪の残っている頭の骨を~手で拾う形~と。
ただ、古い字形がわからないので、元の意味はわからない。
ふむ、なるほど、わからん。

さらに「挨拶」について続く。
どうやら唐代以降の用法であるらしい。
「韓愈」の『辛卯(シンボウ)の年、雪ふる』の詩に、後ろからせまる、という意味に用いている。

指攻め、については記載はあるが、いつ頃だとか、何に載っていたか、とは詳しく書いておらず、よくわからないまま。
しかも、大勢の人が他人を押しのけて前に出ようと押し合う・・・意味に、いつの間にかフェードアウトしている。

ネットで調べると、確かに禅宗では~、禅問答では~、 など、解説がヒットしますが・・・
なんともモヤモヤするばかり。 はたして。

古事記とレディーファースト

どうして女から男へ、先に声を掛けるのがアカンのか?というのが前回のお話。

★古代中国の思想が原因…?

いろいろなところで語られているのが、古代中国の思想。
ストレートに言ってしまうと「男は女より偉い」ってヤツです。
そういう思想を政治だとか普段の生活にも取り入れていく。
その足掛かりとして、古事記の中でもバッチリ、回りくどく描かれているワケです。

正直、割と納得してしまいましたが・・・。

★女性と、血と、魔力

ただここでお話が終了!というワケにもいかないので、他のアイデアも見てみましょう。
興味深いのは、古代中国における「女性と血」の考え方ですね。
ストレートに言ってしまうと「月経と出産」です。

女の人は、月経によって血を流すワケです。勿論、出産時も。
この血を伴うというのがミソで、「不浄な」存在として扱われるんですね。
さらに、出産という豊饒性、血という生と死の両義性によって、女性は「創造できる」スゴイ存在なのです。

確かに、子供という新しい生命を産みだせるのですから。
ただ神事や儀礼のときには、月経・妊娠を伴う女性は立ち入ってはならない、なんてことがあったようです。
さらに言うと、割と近代の台湾なんかでもそういう感じのようである。
今でも、出産前後というのは穢れた状態にあたるらしい。

★妊娠は曖昧!?

妊娠することで、一人が二人になるような奇妙な状態になります。
そもそも何が産まれてくるのかわからない。男?女?

もしかしたら奇形かも知れない。それこそ当時の奇形なんて、かなりインパクトあるかと。
古い時代なんて、近親婚が多く行われていたんでしょうから、遺伝の確率的にも奇形は多そうですが。

他にも、死産するかも知れない。
何なら、母親が死ぬかも知れない。
生と死がウヨウヨしている。
二項対立のモヤモヤした状態なのである。

で、こういう生命の創造力、というのは神々の力と対立するのです。
本来であれば、神様が一番スゴくなければならない、のに。
血の破壊力は半端ないのです。
これには都合の悪い人もいたことでしょう!?

★結局、レディーファーストがマズいワケ

こういう考え方でいくと、確かに女性を先にする、ってのはマズいんでしょうね。
それは時の権力者なんかにとっては、正に都合の悪いことなので、イイ感じに男性優位の状況を作り出す必要があったと。
結局行きつくアイデアは同じところですね・・・。

他にもキーワードとしては、漢民族の「氏族」とか「父系中心集団」ってところが挙げられるでしょう。

何にせよ、当時の日本が中国から色々取り入れていた以上、こういった概念も自然と入ってきた。
そして統治のためにウマイこと取り入れて使っていったんでしょうね。

このテーマはここまで!
古事記は奥が深いですね!

ところで、イザナキでもイザナギでもどちらでもいいんですが、イザナギの方が言いやすいですよね。
ここではイザナキで、統一して書いています。

参考文献:人文書院『性の民族誌』
「血の霊力 漢民族の生殖観と不浄観」植野弘子

異・畏・翼 の話

異・畏・翼。
3つの字について、見ていきましょう!

★白川静の見解

お馴染み、白川の『常用字解』から。
※『常用字解』平凡社:白川静

ズバリ「異」を人間ではないモノ…そう『鬼』だと語ってます。
異=田+共と書きますが、田の部分を鬼の頭部だと考えているんですね。
人が死んで、「人鬼」となると。大きな頭部であることも、人間ではない存在だと語られてます。

我々が今イメージする鬼とはちょっと違いますね。
このような、神異のモノが、両手を挙げている様子を表した字であり、
ことなる、すぐれる、あやしむ…という意味に繋がったと語られます。
象形とはちょっと意外ですね!?

●画像●

この見解は他の字にも繋がっており「畏」も、やっぱり鬼だとしています。
鬼が杖を持っている様子…つまり、これも象形ですね。

★一方『漢語林』では

鎌田・米山の『漢語林』ではちょっと違う見解が載ってます。
※『漢語林』大修館書店:鎌田正、米山寅太郎

「異」という字は、仮面を被った人だとするんですね。
確かにそれもわからなくもないですね。

お面を被った人が、両手を挙げている様子…とこの辺りは同じような考え方です。

「畏」はどうかというと、こちらでは【鬼=人間ではないモノ】として解説されてます。
ただ、杖を持っているのではなく、「鞭」となっています。
人間ではない、あやしいやつが鞭を持っている…ことで、おそれるという意味になったと。

静止状態では、鞭なのか杖なのかよくわかりませんが…。

なお説文解字では、鬼+虎として書かれているようです。

★なぜ翼は羽+異なのか?

羽でも付けた鬼なのか。仮面男なのか。

白川はここで金文の例を挙げています。
(※金文というのは、昔の青銅器に掘られた字体のことです。)

「異」という字が「たすける」という意味で使われているらしく、「異」が「翼」の元の字であったと解説されてます。
そこに「異」+「羽」ということで、「翼」になったと。

ですから【扶翼】や【翼賛】といった、たすけるという意味を持つ熟語も紹介されています。
日常ではなかなか見ないですけど。

漢語林の方でも、両手を挙げてる人に羽が付くことで、翼ということになってます。
さらには、両手を挙げてたすける、ということにも繋がり…
そのため翼という字には、たすけるという字義があると解説されてます。

なお説文解字では、「翅なり」ということらしいです。
ストレートな解説ですね。

★「異」の成り立ちはどこへ行った?

となると、鬼&お面男の話はどこへ行った?というカンジですよね。
それこそ、羽の生えた鬼が~仮面が~という会意・象形ならまだしも、だいぶ話が飛躍してしまっています。

金文に用いられている「たすける」という意味がどういう流れで使われ出したかもわかりません。
両手を挙げてたすける~というのは、儀礼的な様子か何かだったんでしょうか?

正直、絶対的な正解がない以上、よくわからないと言ってしまえばそれまでですが…
「異」というのはタダの人間ではなさそうですよね。

単純に、人ではない、鬼なのか。
仮面を付ける必要があった人物なのか。
そしてさらに他の人の助けとなる存在…
というように考えられるんじゃあないでしょうか。

以上、異・畏・翼の話でした。

音・暗・闇 の話

音・暗・闇 の3つを見ていきましょう。

門というのは、神を祭る戸棚の扉の形であり、
その中で、器(=サイ)と針を置いて祈る、と。
そうすると、神が反応して音を出す、と。

この器と針、そして神のかすかな響きを示したものが「音」という字になる訳です。

やみの中で神のお告げを聴く。
「闇」は、夜更けの中で神の訪れがある、というもの。
その状況が「暗い」ということに繋がる、とも説明しています。

現代では、くらやみの中「聴こえる!」だなんて言い出したら、危ない人認定ですが、
古い時代であれば、聴こえる人=すごい、ということなんでしょう。
だからこそ、巫覡(=ふげき、シャーマンのこと。白川の本では、しょっちゅう出てきます。)は、重用されていたのでしょう。

ここで、「耳」「聖」「聴」といった、耳をパーツに持つ字のお話にも繋がるんですが、まあそのうち。

*実際には、白川文字学の基本である「サイ」とか、入れ墨用の「辛(=針のこと)」の話とか
色々出てきてますが、今回はちょっと割愛します。

白川の考え方は、全体を通じてストーリー的であったり、魔術的であったりオモシロイ解釈でありますが、
勿論、このような考え方に対する批判もあります。

★一方、鎌田&米山では、割とシンプルです。
「暗」というのは、くもっていて太陽がなく、くらい。

すごく、シンプル。
音を表す(=音符の)「音」が、「陰」に通じるみたいですね。

では「闇」はというと、「門」を閉じることで、くらくするということ。
ここでもまた、音を表す(=音符の)「音」が「暗」に通じる、と。
これもまた、考え方はすごくシンプルです。

*忘れないように覚え書き。
闇と、病みが、おなじ「やみ」なのは、何か意味があるのだろうか・・・。

最後にちょっと蛇足を。
闇(アン)は、現代では暗(アン)に書き換えてます。
例えば、闇黒は暗黒。
中学生が好きそう。

以上、音・暗・闇の話でした。

参考文献
『常用字解』平凡社:白川静
『新漢語林』大修館書店:鎌田正・米山寅太郎

古事記をちょっと、読んでみた

今頃、古事記を読んでいます。と言っても、フルの原文ではありません。
読みやす~いように、手が加えられたのを読んでます。

草思社:齋藤孝氏の『声に出して読みたい古事記』。
まあ、古事記入門編みたいな感じです。正直、読みやすいです。うん、読みやすい。
読みやすい理由としては、ルビが振ってあるから、解説が付いているからなど色々ありますが、中高で学習する古典よりも明らかに読みやすく感じます。

氏も、うたうようによめると言っておりますので、恐らくスラスラよめるのではないだろうか。

*「うたう」も「よめる」も平仮名で書いといた方が、幾つかの意味を含ませることができてイイ感じ。
「歌う」と「詠う」、「読む」と「詠む」ではイメージがちょっと異なる。
でも本のタイトルは「読みたい」なんですね。

読んでいると、ちょっと気になる部分が。
古事記って何となく内容をきいたことあったんですが、細かいところまでは、知らなかったんです。
まずは簡潔に冒頭のストーリーを書きますね。

イザナミ(一応補足しておくと、女の方ね!)が、イザナキ(表記はイザナギでもよし。本書に倣ってイザナキ。)に先に声を掛けるんですね。まあ男女ですからね、そんなシチュエーションもありますよね。

そしてまあ、男女ですからね、まあ色々あるんです。
そうして産まれたモノはというと、言ってしまえば「失敗作」になってしまった訳なんです。
(ちなみに「国土」を産もうとしているんですね。スケールがデカい。)

イザナキは女が先に声を掛けるのは不吉だなあ、って言ってるんです。
で、結局そのままホントにダメだったと。
そこで、今度は逆パターンでやる訳です。男から声を掛ける訳だ。

なお、このときエラい神様に占いをしてもらってるんですが、「鹿の骨」を焼いて占いするんです。
これってつまり、古代中国で行われてたことと一緒ってことですよね?
動物の骨を焼いて、その結果で物事を占ったという。そう、そのヒビが甲骨文字に繋がった訳である。

*「兆」という字は、亀の甲羅を焼いて、出てきたヒビ割れを表している…というのが一般的。
白川に限らずね。

そして。イザナキから声を掛けたら、うまくいきましたとサ。

では、なんで男からではないとアカンのか、という疑問。

「女」って神聖な存在ではないのか?それこそ巫女として、子供を産む=豊穣の存在として。
それとも穢れた存在?子供を産む=血を伴うため?
両方?状況による?

続きます。